健康維持のために必要なことのひとつに、「運動すること」は多くの人に認識されているものと思います。しかしながら現実は、習慣的に運動をしている人は、グラフが示す通りどの年代に於いても50%に達しません。
このグラフに於ける運動の定義は、スポーツやフィットネスなどを健康・体力の維持・増進を目的として計画的・定期的に1回30分以上を週2回以上かつ1年以上継続していることですので、これには当てはまらないが運動はしているという方も多くいることでしょう。
「運動」と一口に言ってもその種類はあまりにも多く、「体」自体も人それぞれ個人差が大きい中で、実際どの程度の運動がどんな人に合っているのかとか、ましてや100年を快適に過ごすためには生涯通じて具体的にどんな運動をしていけば良いのかについての実際的なサジェッションは見当たりません。
<運動の原則>
とは言え運動というものの捉え方や効果については原則的なことがあり、そうした原則を当てはめるなら、それぞれ自分の状況に応じて種目を選んだりなど最適な取り組み方が出来るものと思います。
まず人間の機能は使わないと衰え、退化していくという原則があります。
運動をすることで筋肉や心肺機能が向上するだけではなく、達成感が得られてストレス発散が出来たり、免疫応答がちゃんと機能して風邪を引きにくくなったり、生活習慣病の予防にもなり、より良い活動力を得ることが出来ます。
更に運動をすることで脳の活性化にも繋がります。運動の指令を出しているのはもちろん脳であり、歩いたり走ったりジャンプしたり手足の細かい動きであったり微妙な力加減などをコントロールすることが出来るのは脳のおかげです。
結果運動する時には脳が働きますからボケ防止に効果があるのはもちろんのこと、注目したいのは幼児期の脳の発達にはこうした運動が欠かせないということです。子供が鬼ごっこなどで動きたがる傾向があるのは成長期に自然に求められていることと言えます。運動することで脳全体のネットワークがより高い次元で繋がることになり、将来の偏差値にも大きく影響すると共に思考力も向上します。
机に向かって学習やら脳トレをする以上に運動は脳にとって必要不可欠と言えます。
逆に運動をしないなら上記とは真逆の状態を招き、子供のロコモティブシンドロームは増え、「快適人生100年」どころか老化や病気と闘いながら介護を必要とする晩年を経て100歳のずっと手前で命を終えることが予想されます。
<原則から考える効果的運動>
では使わないと衰え、退化するという原則からどのように自分の状況に最適な運動を選択することが出来るでしょうか?
それにはまず大きくふたつのこと、有酸素運動と筋力トレーニングを行うことを念頭におく必要があります。
ちなみに今回は競技スポーツの現役で専門的に体を鍛える人は除いて考えます。
また細かい生化学の解説ではなく、運動をする際の必要最低限知っておくべきことに触れてみたいと思います。
まず人の身体は、車がエンジンでガソリンを燃やすように、燃料を燃やしてエレルギーを生み出していますので、日常生活の中で、歩いたり階段を登ったりなど体を動かす時には燃料がエネルギーに変換されることが繰り返されています。
その燃料の種類には、遊離脂肪酸、ブドウ糖、クレアチンリン酸の3種類があり、それぞれどのような時に燃えるかが分かっています。
遊離脂肪酸は体内に蓄積されている脂肪が酵素によって分解されたもので、じっとしていたのでは酵素が活性化されず、脂肪のままなので燃えることはありません。
また、急激な運動でも遊離脂肪酸は燃えず、有酸素運動によって酵素を活性化させて脂肪が有利脂肪酸に変換されて燃え続けることが出来ます。
ブドウ糖は糖質が変換されたもので、これも糖質がそのままで燃えることはありません。ブドウ糖はグリコーゲンという形で肝臓と筋肉に貯蔵されていて、肝臓に貯蔵されているグリコーゲンは遊離脂肪酸が燃える手助けをし、筋肉に貯蔵されているグリコーゲンは急激な運動、無酸素運動の際に燃焼します。
クレアチンリン酸は体内で生成されて骨格筋に貯蔵されているエネルギー源です。これは瞬間的、爆発的な、例えば短距離走などの時に瞬時に使われてすぐになくなってしまいます。
ということで、運動を行う際は、自分がやろうとしているその運動は何が燃料となって燃えているのか?ということを考える必要があります。体を動かすならなんでも良いという訳ではありません。ムキになって身体に負荷をかけると糖質が燃え、脂肪は燃えてくれません。とは言え糖質は脂肪が燃える橋渡しの役割を果たすので、糖質を摂らなければ脂肪が燃えるということにはならないのです。身体が糖質を切らしてしまうと脂肪は不完全燃焼しか出来ず、ケトンという有害物質を産生して本来の身体の機能ではないメカニズムが作動します。確かにケトンは100%悪者ということではなく、何日も食べなくても生きられたりするのはこのケトンのお陰です。ですがそれは体内の筋肉などタンパク質からエネルギーを持ち出すことになるので免疫系やホルモン、酵素の本来のバランスを崩してしまいます。
自分の運動は正しい有酸素運動かどうかを必ずチェックしましょう。
<有酸素運動>
「快適人生100年」のためにはまずこの有酸素運動は必ず取り入れるべき運動と言えます。
もちろん体力に応じて様々なボール競技や水泳、ウィンタースポーツ、登山、格技などを楽しむことも重要でしょう。ただ生涯通じて有酸素運動を行い、体の効果的な新陳代謝を繰り返すなら、「快適人生100年」が送れます。
さて、その有酸素運動ですがどのように考えて行えば良いのでしょうか?
そのキーとなる誰にでも分かり易い目安が心拍数です。自分の最大心拍数を考えたことがあるでしょうか?最大心拍数は220という数字から年齢を引いた数で、30歳なら190、60歳なら160となります。これは一流アスリートであっても同じです。
最大心拍数の65%~85%の有酸素運動で遊離脂肪酸が燃焼しますが、個人差はあり「キツイ」と感じるならそれは有酸素運動の域を超えています。
種目としては自転車系、ジョギング系、スタジオ系(ヨガ、エアロビなど)、プール系など様々ですが、生涯通じてを考えるならズバリ「ウォーキング」がお勧めです。
ダラダラ歩きではなく早歩きを1日トータル30分位を目安に習慣づけるなら体脂肪が効果的に遊離脂肪酸に変換されて燃焼することになります。
ハートレイトモニターがあれば常時脈拍をチェックしながら行うことが出来ます。
ただし最低週3回以上は行わないと酵素は生み出されず、効果は期待出来ないことを知っておきましょう。
<筋力トレーニング>
そして大きいもうひとつのこと、筋力トレーニングについても触れてみたいと思います。
ただあくまでも、人生100年を見据えた中で筋肉とどう付き合うべきかについて考えてみますのでアスリートのパフォーマンス向上や筋骨隆々の体を作る話は置いておきます。
まず個人差はありますが筋肉は何もしないでいると30~40歳くらいから1年に1%程度ずつ減っていきますので、80歳では3分の2くらいになり、100歳では半分以下になってしまうということになります。これでは恐らく普通に歩くこともままならず、快適な日常生活を送るのは難しい状態かと思います。
しかしながら嬉しいことに筋肉は、正しく鍛えさえすれば何歳になっても増量することが出来るのです。そこで「正しく」という原則を考えて具体的方法に迫ってみたいと思います。
その原則とは難しいことではなく、筋肉に過剰負荷をかけるということと、そのかけた負荷によって必要な回復時間を考慮して次のトレーニングを行うということの2点です。
ただ何れも個人差があり、多少の試行錯誤が必要と言えます。有酸素運動は毎日行っても良いですが筋トレはインターバルの期間を設けなければならないことを知っておきましょう。
<具体的メニュー>
今回は自宅で自体重で行える方法を考えてみます。
まずどの筋肉を鍛えるかについては、大きく上半身と下半身に分けつつ体幹を意識したものであればベターです。そこでひとつの筋トレでこれらに複合的に効果のあるメニューを紹介します。
上半身については、恐らく誰でもイメージ出来る腕立て伏せのフォームから応用したものを5つお勧めします。
①エンデュランス
腕立て伏せの「伏せ」の状態で静止して一定時間キープします。
10秒くらいから始めて徐々に秒数を伸ばしていきましょう。
②プランク(腕立て)
腕立て伏せの「立て」の状態で静止して一定時間キープします。
これは「伏せ」よりも軽いので15秒くらいから始めてみましょう。
③プランク(肘立て)
腕ではなく肘で支えて一定時間キープします。10秒くらいから始め
ます。
④プランク(肘膝支え)
肘と膝で支えて一定時間キープします。これは20秒くらいから始め
ましょう。
⑤ムービングプランク
上記②、③、④ の姿勢で前進4歩後進4歩を繰り返します。
2往復くらいから始めます。
上記何れも上半身筋肉と体幹に効果があります。
どれかひとつで十分ですが一番のお勧めは⑤になります。
②、③、④のフォームのどれかを選んでトライしてみて下さい。
下半身はズバリ「スロースクワット」をお勧めします。
仁王立ちのように肩幅よりやや足を開いて立ち、手を頭の後で組んで膝を曲げ伸ばしする運動です。
・膝は関節に負担のない範囲で曲げますが、膝角度90度が目安です。
・上半身を前傾させないため、真上の天井を見る感じで行います。
・5秒で曲げ、5秒で元に戻します。10回位から始めたいところです。
この運動も体幹に効果的です。
色々と運動に関して書いてみたものの、かなり省略していて、それぞれの一分野だけを取り上げても一冊の本になる以上の奥の深いまたボリュームのあるものです。
運動はただ闇雲に体を動かせば良いのではなく、目的や意義を正しく理解・認識してリーズナブルなメニューを正しいやり方で行ってこそ効果があるということが重要です。
「快適人生100年」に「運動人生100年」をプラスしたいものです。
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